村上紀行                            2013年1月号
H.T

 12月29日、新潟の村上市へと出かける。新潟からの特急いなほは、年末の帰省客で一杯で、しばらくは立席となる。日本海側は大荒れとの天気予報に、横殴りの雨や雪を覚悟していたが、29日は快晴。「昨日まで雪で大変だったんですよ」と聞くのがウソのように、風もなく穏やかなのである。
 駅前から少し歩くと肴町(さかなまち)との表示。さらに少し進むと、鍛冶町。町屋造りの家々が道の両側に並ぶ。木造2階建て焦げ茶の板壁、通りに面して、ガラス戸の店。お茶屋、金物屋、しょうゆ屋、民芸ギャラリー、堆朱店。京都にならった文化風土の村上。いつも行く料理店「千渡里」(ちどり)も、戦後すぐに開店した一代目のころは京料理の店だったという。
 間口二間、うなぎの寝床の奥行きの町屋造り。中庭があったりして、大屋敷である。

 民芸ギャラリーを覗く。湯飲み・お猪口などの焼き物、アクセサリー類やランプシェードなどに並んで、塩引き鮭の人形というかぬいぐるみが下がっている。腹を割き、一皮だけ残してあるなかなかリアルな出来である。値段は1万円以上したりする。本物以上の値札がついている。話し好きな店主の相手をし、何も買わずに出る。
 次に、堆朱の店ふじいに入る。食器、茶器入れ、お盆、箸。おかみさんが説明してくれる。2階を工房にして、自分のところで作成しているという。市内に数十人の漆職人がいて、赤い漆を何層にも塗って仕上げる堆朱(ついしゅ)製品となる。昔は山の漆取りから地元でまかなっていたそうであるが、今はほとんど中国からの輸入漆とのこと。お椀など、黒と朱のみごとな色である。箸数千円。お盆数万円。ふた付きの茶器入れなどは二十万円ほど。目の保養とする。

 小町通りに入ると今夜の宿、井筒屋もすぐである。芭蕉が投宿した由緒ある建物。母屋は国の登録有形文化財。一日一組だけ宿泊できる。1階がカフェ。
 夕方、千渡里へ。予約時にはカウンターしか空いてないが、とのことだったが、開店まもなく行くと、小上りの広い席にしてくれた。刺身、鮭、そば・・・。満足満足。


 旅館井筒屋のカフェ
 
 軒先の塩引き鮭(うおや)    いろりの間(井筒屋)


 鮭の人形(本物より高値!)


 堆朱の漆盆(4万円 本彫堆朱ふじい)
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