吉川弘文館
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本書は、明治維新の敗者である旧徳川将軍家が、旧徳川の優れた
人材を元に作られた教育機関「沼津兵学校」に関する著作である。
徳川家は４００万石の大名であったから、軍事力も強大で幕府陸
軍の総兵力は１万７０００人に達していた。それが敗戦と明治維新
で一挙に７０万石に減らされているわけだから、その人員の整理も
必要だったはずである。
「沼津兵学校」の果たした役割として、
①江戸幕府が残した軍事関係の人材や書籍・器械等を継承し、明治
政府へバトンタッチする中継役を担ったこと。
②育成した生徒の中から、幅広い分野にわたり国家・社会の指導的
役割をはたす多くの人材を輩出したこと。
がよくわかる。
また、当時の校長である西周が、既存の兵学以外にも、法学・政
治学・哲学・文学・歴史学・医学・工学・農学などの科目の創設も
視野に入れ、総合大学化構想を考えていたというが、その先駆性に
は目を見張るものがある。
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