丘の上には、一本の桜の木がありました。その桜の木 |
をはさむように、家が二軒ありました。赤い屋根と白い |
壁の大きな家と、みどりいろの小さな家。 |
大きな家には、ウサギのママと子供がふたりおりまし |
た。男の子はグレー、女の子はピンキーといいました。 |
いっぽう小さな家には、アライグマのポポロおばさ |
んが一人でひっそりとくらしていました。 |
からすのかっちゃんは、ゆうびんやさん。 |
とちゅうちょっとよりみちしていたので、すっかり暗く |
なってしまいました。 |
丘の上には、大きな家の大きな明かりと、小さな家の |
小さな明かりがほんのりとみえています。 |
どうして、みちくさしたかですって? |
この丘の東にある、みずうみの主と、こんなことがあっ |
たのです。 |
みずうみのほとりで、大きなため息をついて、ぼんや |
りとしていると、 |
「ためいきをつくと、しあわせがにげていくよ。」 |
みずうみの主がかっちゃんにこえをかけました。 |
「丘の上の家の、はいたつがつらいんだよ」 |
「雨の日も、かぜの日もやすみっこなしだからね。」 |
「ちがうんだ」 |
大きな家に届けるものはいっぱいあっても、小さな |
家にとどけるものは、まったくないんだ。 |
「うわーい、やったあー」 |
グレーとピンキーの元気な声。ふとふりかえると、 |
静まり返ったみどりいろの小さな家。ことりとも音が |
しません。みどり色の家にはだれもたずねてきません。 |
もちろんゆうびんだって。かっちゃんは、ポポロおば |
さんがかわいそうだったのです。 |
みずうみの主は「うんむ」とうなってざわざわと波を |
たてました。 |
「それは、きみのせきにんではないよ。」 |
みずうみの主も「ふう」とためいきをつきました。 |
そのとき、ホトトギスが |
「かっちゃんかけたか、かいたか、かけたか、かけ |
たか、かいたか」 |
とさわをこえていきました。 |
みずうみの主とかっちゃんが顔をみあわせました。 |
ポポロおばさんにてがみをかけばいいんだ。でも、 |
だれが?かっちゃんが……。 |