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古本屋おやじ 中山信如 ちくま文庫
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--映画専門古書店の奮戦記 30代を前にして、5坪の古本屋を継ぐや、「好きな本は扱いたい、嫌いな客は御免こうむり」たいとばかりに、まず「女子供」の本をはずし、実用書を撃退、つづいて経済書(対安サラリーマン)、捕物帖・戦記物(近所の旦那衆)、雑誌(養殖ハマチ風若者)、最後にエロ本(それにしか興味ない人種)を追放。かくして、下町に異彩を放つ映画専門の古書店誕生。結果、「夜八時、気がつけばひねもす訪なう人もなかったナ、誰とも会わずにすんだナ」とシャッターをおろすのである。 珍客・奇客とのやり取り、掘り出し物発掘のスリル、なぜか正当派古本より売れるブロマイド... 古書の売買は海千山千のキ印達の世界?。 なまじ本が好きだからなどと古本屋を始めてはいけないとの忠告の書。かつ、零細自営店主の涙々の奮戦記。とても他人事とは思えません。 「現代日本告発の書」とは、「古本屋あがりの作家」出久根達郎氏の解説。 |
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エスキモーが氷を買うとき きこ書房
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奇跡のマーケティング 「きこ書房」の本はなかなかいける。 ジャン・スポールストラ「エスキモーに氷を売る」の続編。弱小バスケットボールチームの経営を任された時、どうしたか? なんと、相手チームの超有名選手を宣伝して試合のチケットを売りまくり、チームは相変わらず底辺を徘徊しながらも試合は大評判。黒字経営に。 常識破りの実践の数々。こんな人生は楽しい。 |
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宇宙物理への道 佐藤文隆 岩波ジュニア文庫
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ジュニア文庫だからとバカになんかしてはいけない。 誰にでもわかるようやさしく書くというのが一番難しい事かもしれない。(プログラムづくりだって同じなのだ) 厚さも手ごろ、漢字にはふりがながふってあったりする。これもうれしい。 1949年、小学6年、湯川秀樹ノーベル賞受賞が人生を決める。京大へ。物理学を研究。宇宙論で活躍。かの、ホーキング来日にも尽力。宇宙というとてつもなく大きな対象に、量子物理学という原子より小さいものの理論から迫っていく不思議な世界。 われわれの宇宙は、究極の素粒子サイズからビッグバンで誕生し、150億歳くらいらしい。日本の財政赤字が何百兆円なんて聞くと、宇宙は若い。生命の素材、酸素、炭素、鉄−−みんなビッグバン後の星でつくられ、超新星爆発でばらまかれた元素。言ってみれば、人間、考える星屑。または、自分自身を思惟する宇宙なのだ!? 「兵隊に行って死ぬのだ」と考えていた少年が、その後の平和のなかで学問の道を歩めた喜びを語った一冊 |
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有機農業が国を変えた 吉田太郎 コモンズ
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遭難者が極限状態から奇跡の生還をした、その時持ち帰ったのが賢者の石であったとでもいうべき、現代の冒険物語でもある。 (ここでは遭難者はカリブ海の島国の1000万人であった) ソ連崩壊で激減したサトウキビ輸出と、アメリカの貿易封鎖のためGDPが 半減、経済が崩壊状態となったキューバ。栄養失調のため失明者が続出、成人の平均体重は10kg減少。 大量の餓死者もと思われた危機の1990年代前半、あらゆる知恵を絞った末、国をあげて食糧確保のため有機農業に転換。 ミミズによる堆肥づくり、牛を使って耕作、天敵による害虫駆除、共生細菌培養、首都ハバナの隅々まで家庭菜園化し食料自給。奇想天外な実話の数々。 高度なリサイクルと最先端のバイオ技術、クリーンなエネルギー利用、市民自治のコミュニティーとNPOの活躍。 10年たった時、「世界でもっとも有機農業が進み、いま注目すべき国」、環境先進国へと生まれ変わってしまったのである。 涙々?? いやいや、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』とラムで乾杯、VIVA CUBA ! |
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オリガ・モリソヴナの反語法 米原万里 集英社
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知る人ぞ知る新進気鋭の女性作家によるミステリー(?)小説。 『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』ってのも書いてる人ですね。 舞台は今から40年以上前のプラハ。 「私」はまだ10歳そこそこの小学生。 台風か竜巻のような謎の女性教師オリガ・モリソヴナ。 顔はおばあさん。自称年齢をどう見ても20歳はサバを読んでる。 にもかかわらず、首から下だけみるなら絶世の美女、そのエネルギッシュな事。 ダンスの授業で機関銃のように飛び出してくる罵詈雑言。 さあ、今日はこの嵐のような攻撃からうまく身をかわせるか? 生徒も教師も読者も巻き込んでの波瀾万丈の物語の始まり始まり〜。 ところで『反語法』とはなにか?つまりだ、いわゆるホメゴロシのようなもんだな。 「なんとポポロソフトウェアの不景気な事!これじゃいつつぶれてもおかしくないよ!」 エッ、それは反語法じゃない?! |
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印象派 ジェームズ・H・ルービン 岩波書店
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岩波 世界の美術シリーズ全12冊の掉尾を飾って刊行されたのが本書。 舞台は19世紀後半のパリを中心とするフランス。 モネの「印象、日の出」により、後日『印象派』と呼ばれる事となる画家たちの群像。 激しく揺れ動く当時の社会。共和制と王政復古勢力の確執、 パリ・コンミューンとその反動による惨劇。 熱烈な共和主義者として伝統に挑戦するマネ。 戸外の光を画布に写し取ろうとするモネ。 一方では売れる絵のための画風を追うルノアール。 さまざまに試行しながらも、自己表現としての近代絵画が誕生してくる 臨場感あふれるドキュメント。 しかし意外にも、20世紀絵画への決定的な影響を与える事になるのは、 パリから遠く離れた南仏で一人修行僧のごとく自らの世界を探求し続けていたセザンヌだったとは。 さて、このシリーズ、これでめでたく幕を閉じるかと思いきや、第2期12冊が続くという。『アボリジニ美術』以下『モネ』までという。 相当に斬新な品揃えではある・・・。(来年3月から刊行!) |
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自由法曹団物語 自由法曹団編 日本評論社
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いわば、現代の弁護士版『赤ひげ』である。 戦前に結成された由緒ある弁護士集団の、これは最近30年ほどの活躍を物語風にまとめた読み物。 地味な装丁と題でちょっと損してるが、中身は「事実は小説より奇なり」。 新聞の一面を飾ってきた数々の事件が思い浮かぶ。 川辺ダム、市民オンブスマン、ハンセン病、スモン・エイズ薬害、過労死、女性差別、冤罪事件、沖縄基地、等々等々。 法廷でのスリリングな応酬、裁判官の心の琴線に触れる弁論、法廷の外に訴え共感を呼んでいく過程、一話一話がまさに劇であり、ドラマ。 「もし君たちが弁護士として悔いのない仕事をしたいなら、君たちはその時代の苦悩の中に身を置かなければならない。」(米合衆国最高裁判事ホームズ、本書より)そんな弁護士達の、反骨・硬骨かつ大胆不敵な群像。日本もまんざら捨てたものでもないと思う。 |
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アホでマヌケなアメリカ白人 マイケル・ムーア 柏書房
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先頃のアカデミー受賞での大演説がテレビをにぎわせた監督の、 スリラーもの。 9・11以降、長大な機内持ち込み禁制リストが作られた。銃、ナイフ、爪切り、編み棒、ドライアイス・・・。だが、マッチ・ライターはOK。(機内で靴爆弾にマッチで点火未遂事件があったのに)???。こっそり耳打ちした議会関係者いわく、原案にはあった。ところがタバコ業界から猛烈な圧力がかかって、ブッシュ政権がはずさせた。「テロリストの脅威」よりマルボロ中毒者が空港についたとたん一服させることが大事なのか?と疑心の著者。そして、そしてとたぐっていけば、出るは出るは、奇怪、不可思議のアメリカ権力界に跋扈する魑魅魍魎の世界。いやはや。 そんなこんなの続きが、かつての盟友、チグリス・ユーフラテスへの「精密」な「誤爆」、「人狩り」作戦・・・。現代版バベルの塔との声も聞かれるが・・・。 いったいなんで、こんなアメリカになってしまったんだ?それは、同じ「アホでマヌケなアメリカ白人」のオレのせいだ。と懺悔するマイケルだが。「アホでマヌケな○○人」?。○○って誰かよーく考えてみろよ、ヒトゴトだなんてと思うなよ、というコワイ書なのである。 |
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キュビスム ニール・コックス 岩波書店
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表紙の写真、これはピカソのギター。紙で作ってあるが彫刻という事になるらしい。 昔、美術の時間に、石鹸に浮き彫りを彫ったが、モデルはピカソの「ヤギ」の彫刻の写真だった。 絵画とは何かということを変えてしまった、20世紀初頭のピカソとブラックからはじまった挑戦。 コラージュ、抽象絵画、ポップアート、現代彫刻。その影響は今も計り知れない・・・(どこかで聞いた事のあるセリフだな) |
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登山不適格者 岩崎元朗 NHK出版
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ドキッとする題である。 みなみらんぼう氏とNHKの山登り教室の番組放映で 評判となった著者ならではの、山を甘く見るなとの書。 ディズニーランド気分で山に行き、遭難騒ぎまでおこしてしまうこともある最近の登山者を憂え、止むにやまれず書いた「あたりまえ」の心得と知識−−装備、計画、モラル、自己責任の原則。 山に登るとは「オリジナリティのある知的な冒険」、そのための最低の水準を説く。 逆説の山登り入門書だが、自然と人間(自分)の関わりへの反省を促されるのである。 岩崎元朗の、山にささげる愛の書でもある。「山は日々に新しい」。 |
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山の自然教室
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山に登って、いっぱいに咲いた高山植物を見るのはとても楽しい。 それを目当てに登る人も少なくない。 でも、それだけなのか?というのがこの本。 『日本の山はなぜ美しい』(古今書院)はじめとした好著を出している著者の、植生と地質・地形の関係に注目したユニークな山の案内書、山の自然史。 北八ヶ岳の縞枯れの謎解き。尾瀬が原になぜ樹木は育たないのか? 白馬の「お花畑」、三国境の流紋岩地の縞々模様はなぜ?富士山の宝永火口の植物は?氷河期のカールやモレーン・・・ 日本の山というのは、実は個性的ですばらしい山が揃っていて、「世界に誇るべき日本の宝」という著者の、山と若者への知の贈り物である。書を捨て山に行こう! |
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ニーハオ中国語 林 怡州、鄭 暁霞 監修 池田書店
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7月20日発売、ぴかぴかの新刊本。 「中国に遊びに行きたい、旅行に行ってすっかりはまってしまった、中国人の友だちができたので中国語で話したい・・・」 そんなあなた向けの、なんとも楽しそうな中国語会話入門。 CDもついていて耳からのレッスンを堪能したあとは、いっぱいのイラスト(山本峰規子さんによる)で目をたのしませ、興味津々のコラムで、中国の習慣や文化についての造詣を深めるという、実に内容豊富かつ奥の深い本書なのである。 日本の生活に密着してきた著者だからできた、心憎いばかりの配慮が払われている書。SARSも収まり、これからのアジアと世界に目を向けるとき、座右の書としたい一冊。 |
紹介図書 ・・02.4-03.8掲載・・