上海・蘇州への旅(蘇州編 その2) | |
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蘇州四大名園随一と言われる「拙政園」は、元々は唐代の詩人・陸亀蒙の住宅だったのだそうです。元代には寺(大宏寺)であったものを、明代になって王献臣が庭園として造営(1509年)したと言われています。その名の由来は、晋代の潘岳(247〜300)の著した「閑居賦」の中の『拙者之為政《拙き者の為政なり》』から2字を取ったものだそうです。 敷地の5分の3を池が占める水郷ならではの |
「いやぁ、すごいもんですね。これが個人の邸宅跡ですか!」 | |
解説書によれば、東園・中園・西園の三つからなり、面積は約5haにのぼり、留園(蘇州)と共に、頤和園(北京)・避暑山荘(承徳)と並ぶ中国四大名園の一つ…正面、築地造りの建物には“文征明”書の《鳥鳴山更幽 蝉噪林愈静》。池を望み、更に池の中央には、吾妻屋式の建物の”荷風四面”の九曲橋の支柱には《四壁家風三面柳 半潭秋水一房山》の聯が庭園を一段と引き締める。他に留聴閣、田堂六鴛鴦館などがある…と書かれていますが、「百聞は一見にしかず」。 門前には各国ガイドが出番を待ち、外国人観光客をエスコートするためにアンテナを張り巡らせています。東洋式庭園は西欧人好みなのか、金髪、銀髪の外国人の姿が意外に多く、ガイドとあれこれ交渉をしています。我々のところにも、囁き交わす日本語を耳敏くキャッチして、すかさず「日本語のガイドできます…」と数人が寄ってくるのを尻目に、ゲートを潜ることにします。 |
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園内の5分の3を池に仕立てた絶景は、本来、その池の主となる睡蓮が満開となる夏こそが見頃なのかもしれませんが、冬になれば、氷に覆われてしまう不毛のような空間も、庭園の創作者には計算済みのことなのかもしれません。中国様式の建造物と特異なフォルムの太湖石と池との精妙なバランスは、季節に囚われることなく楽しめる楽園かもしれません。 |
我々がここ拙政園を訪れるのは2度目になります。思えば、前回は夏休みにやってきたのですから、まさに睡蓮が満開の絶頂期だったのかもしれません。数年ぶりに訪れた拙政園は、真冬の震えるような寒さの中でも、多くの外国人観光客で賑わっていました。 池の表面が鈍く光を反射しているように見えるのは、全面氷結しているためです。ところどころに散見される白い塊りは氷のかけらです。全面氷結しているので、若い女性が恐る恐る氷の上に片足を乗せてみたり、手水鉢の氷を池に投げ入れてみたり…いたずら行為は世界共通のようで、見ていると、人種とは無関係に、誰もが似たような行動を取っています。 中央にシルエットとして見える報恩寺塔は北寺塔とも言われ、高さは76mの8角9層の塔で、美しい姿をした塔です。孫権が母親の為に建立したと言われ、当初は11層あったものだそうですが、南宋時代(1127〜1279年)に煉瓦と木を使った現在の姿に改修されたのだそうです。 もう少しくっきり見えると良かったですね。 |
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中国では緑と言えば柳ですが、この時期ですからさすがに緑というわけにはいきません。独特のフォルムの屋根瓦や橋などから中国様式を感じていただければ幸いです。なにせたくさんの写真の中から独断と偏見で選りすぐった数少ない写真で、拙政園の全容を伝えようとする無謀な試みなので、紹介する私の方も、いささか心苦しさを感じているしだいです。
拙政園のもう一つの見ものは、盆栽園です。盆栽は爺さん趣味だと思われるかもしれませんが、ここの盆栽は桁違いの迫力で、巨木をそのまま盆栽に仕立ててしまったのか…と、見紛うばかりの威容を見せてくれます。 |
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右側の写真はその一例ですが、傍らの観光客と比較すれば、その大きさが分かろうかと思います。かなり引いて撮影したにもかかわらず、全容を納めることができませんでした。好事家には垂涎の的となる逸品がゴロゴロしているのも凄いです。日本の盆栽も中国伝来の文化を継承したものだということがよく分かります。 | |
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夕暮れて、蘇州の街に出てきました。ちょっとした散策も運河の畔を歩くようになります。一般観光客に言わせると、運河の水が汚い…と、苦情タラタラで残念ですが、日本でも運河や堀割の水は総じて汚いですから、こと蘇州の運河だけを汚いと責めるのは問題があるかもしれません。 拙政園の通りを隔てた向かい側には獅子林などの名園もあり、留園も近くに位置していますので、庭園めぐりをするつもりなら、1日がかりで駆け足で回ってくることも可能です。 |
蘇州は美しい街です。友人はこの街が気に入って、腰を落ち着けるつもりのようです。上海の慌しい雰囲気から比べると、何とも長閑な雰囲気が漂う街ですが、観前街のメインストリートは土産物屋が建ち並び、夜でも賑わいを見せています。 この街のサービスは、夜景の美しさを無料で提供しているところかもしれません。 |
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もともと運河が幾筋も交差し、水路が張り巡らされた街並みですが、春秋戦国の時代からの歴史の街でもあり、歴史を伝える建造物もそこここにあります。そうした建造物がチューブライトで彩られ、夜の闇に浮き上がるように光彩を放つ姿は、とっても幻想的で、冬の寒さも忘れて楽しんでいたい気分になります。 |
明日は呉の国のつわものどもの夢の跡を辿って、春秋時代の唯一の城壁(?門)を見学できる盤門景区を訪れる予定です。かつて蘇州城を守備した重要な水門要塞の跡が残されています。たなびく呉の旗印を見ると、歴史の足音が風のように伝わってきて、思わず身震いしそうですが、ただ寒いだけだったのかもしれません。次回は呉軍の喊声が聞こえてくるような…そんな歴史の扉を開ける旅です。 | |
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