上海・蘇州への旅(蘇州編 その3)

 春秋時代の面影を残す唯一の城壁(?門)を見学できる盤門景区の入り口に立つと、荘厳な雰囲気が漂っているような気がします。観光スポットから外れているのか、人影はまばらです。  
ここには蘇州城の要ともいえる水門要塞の遺跡が残されています。下の写真の中に、たなびく呉の旗印を見ることができます。その左手下が水門となっていて、石組みの基礎の上に、巨大な滑車が残されています。赤錆びてしまっていますが、これで水門を開閉してたんだな…と古代の力を感じました。
 水路と陸路の両方をここでコントロールし、敵勢の進入を食い止めた鉄壁の要塞だというような説明書きがされています。

武が軍師だったこともあり、強国として勇名を馳せた時代があります。
 ここ?門は伍子胥を祀る廟で、伍子胥を死なせて後悔した夫差が記念に建てたといわれています。 館内には、どでかい伍子胥の像があり、伍子胥に由来したものが多く残されています。
伍子胥は、日本ではあまり知られていない存在ですが、中国では結構有名人で、最近、日本でも彼の名を表題にした本(伴野 朗 著)も見かけました。

もともとは楚の名家の出身で、一族を滅亡させた楚の平王を倒すことを終生の目標にしていたのですが、平王が既に死んでしまっていたため、平王の棺から遺体を取り出すや、手にした鞭で何度も何度も激しく死体を鞭打ったという故事から「死屍に鞭打つ」という言葉が生まれています。びっくりした親友申包胥の非難に対して、「俺はもう日暮れて道遠しと云う身だ。だから倒行して逆施するのだ…」(史記-伍子胥列伝)と語ったとされ、ここから「日暮れて道遠し」という名言が残されていますし、「倒行逆施」という熟語も生まれています。

 その昔の呉の要塞の跡をそのまま残しているのか、広大な敷地にゆったりと配置された中国風の建造物を楽しみながら、散策路に沿って歩くだけでも、身体の内からポカポカと温まってきます。城壁の跡のような土塁の上を歩いていると、鳥のさえずりが耳に心地よく、心洗われるような気分で、とても爽やかです。   往時を偲ぶ便(よすが)なのか、アトラクションとして、縁日もどきの矢場がありました。ホンモノとは思えないような弱い弓で、矢もおもちゃのように歪んで頼りないものでしたが、皆で試してみました。私は弓道(小笠原流)をやった経験があるのですが、おもちゃの弓は勝手が違って、上手くいかず失笑を買ってしまいました。
射ち起こしから弦を引き絞っていくと、番えた矢が弓から外れて、そのまま手前にポロリ…。自分でも笑ってしまいました。

 ここで、偶然ですが大阪から来たという3人の大学生と出会いました。見たとたんに“あっ
日本人だな”と直感したので、声をかけてみました。
 「みんな初めての海外旅行です。中国って、凄いですねぇ…!」
 彼らも弓に挑戦していましたが、上手く行かないようでした。

  下の写真で?門の全体像を感じ取ってもらえれば…と、思います。中国では旧正月(春節)中心といっても、新正月もお祝い気分は多少あるのでしょう。何となく“お正月”という飾りが施されています。

広々と見渡せる園内の向こうに近代的な建造物が建ち並んでいるのを見て、「はっ…!」と気付いたように現代に立ち戻る。そんな歴史ロマンの中に埋没していたような不思議な気分です。
4000年の歴史がいたるところに散見されて、いつでも、どこからでもタイムスリップしたような気分になれるというのも中国ならではなのかもしれません。
 蘇州は運河が網の目のように張り巡らされた街ですから、日本風に言えば“川魚料理”中心のメニューが
“海鮮”という名で食べられます。
外へ出ると幽かに夕暮れて、歩き疲れたせいか、のども渇くし、お腹も程よく空いてきて、次の興味は、どこで食事にするかということ。
 昼間は気にも留めなかったところに突如として降って沸いたように弩派手なサインボードを掲げた“海鮮料理”店が出現しているので、誰言うともなく、その店「紫禁城」に入ることにしました。
 一行4名なのですが、「我々はいつも来てるんだけど、部屋取れないの…」

 部屋は通常予約制で6名以上からだと言って譲らない店員に向けて、初めて訪れた店で、これだけ堂々と交渉して、4人で個室に案内させてしまうところなど、中国人の面目躍如たるところがあります。
 中国で食べる中華料理は、日本人の味覚にはあわないところもありますが、独自の嗅覚で美味しいものを選別して、大勢で食べれば、これほど楽しい食事もありません。
 腹ごなしに、蘇州の繁華街「観前街」を夜更けまで散策しましたが、こんな田舎町でも夜遅くまで人波が絶えないのも凄いなぁ…夜7時になると、さっさと閉店してしまうどこかの町の様子とはえらい違いです。


上海・蘇州への旅 (上海編)

上海・蘇州への旅 (蘇州編その4)
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