サ ハ ラ
                      アリババ
  暗闇の中を4WDが疾走します。6人ずつ分乗して、サハラを目指し、何台もの車が、それぞれのコースを選んで前方をヘッドライトで照らし、砂埃を巻き上げながら進んでゆきます。外は星が点々と空に浮かんでいます。午前4時に起こされ、4時半に出発。さすがに眠いのですが、サハラ砂漠の日の出を見るのだ!と楽しみにして参加した人も少なくないようです。
 左手を見ると、ずいぶん遠く離れて1台の灯りが見えます、いやいや明るい星か? そう思ってしばらくすると、明るさがだんだんと増してきました。よく見ると、鋭くとがった月が今、地平線に顔をだしたところだったのです。金色の鎌の刃先が静かに昇ってくるのは、実に幻想的な光景でした。後でみることになる日の出よりも、この月の出のほうがはるかにファンタステックであったと思うのですが、暗闇ではツアーもやりにくいのか、「月の出を見に行こう」といううたい文句のツアーはないようでした。
 地中海に向けて、頭を東北にしたムササビの形がモロッコとすると、右わき腹あたりにエルフードという街があります。そこから出発して南に50kmが目指すメルズーガ、砂漠見学の地となります。


サハラの夜明け
   車が着くと、ラクダが20頭ほどでしょうか、待っています。まだまだ暗く、足元もよくは見えませんが、ラクダ組はそれぞれ1頭ずつにまたがり、ラクダ引きに案内されて出発です。徒歩組も一緒に歩いていきます。「砂丘はとても歩きにくいので、ラクダがお勧めです」というのを素直に信じて予約金3000円ほどを払っていた人がラクダ組です。いやいや、砂など大丈夫と、徒歩組も半分位います。とは言っても、乗っているのはせいぜい15分位。最後の砂丘の山の部分は、結局自分の足で登っていって、見晴らしのいい場所に到着。ようやく、空も東が青みがかってきました。ラクダの背のじゅうたんを砂に敷き、日の出を待ちます。

キャラバン
 飲み仲間と2人で腰かけ、ラクダ引きの青年と雑談。20代半ばで、妻と一男一女がいるとか、とてもハッピーだ、子供は10人くらいほしいんだ、とのこと。砂漠の明るくなってくるほう、東の方をさし、このすぐ先はアルジェリアだ、私の両親はアルジェリアに住んでいる、と言っていました。



  もうそろそろ日の出かと待っていると、その青年が「アルバイト、アルバイト」と言い出して、なにやら袋を取り出し、おみやげに安くしておくからどうだ、と化石の置物を並べだしました。ラクダ引きの手当てだけだと食べていけないのだ、助けてくれ、と口上を述べます。辺りを見ると、ほかの組もやはり口説かれているところでした。断るのに精一杯で、日の出もなにやら現世的に見えたのでした。
 やれやれ日も出たし、帰ろうとラクダに乗ると、アルバイトに協力しなかったせいか、ややそっけない感じでラクダを引いていきます。降りるとき、チップは200円ほどと聞いていたのを、上乗せして渡したのですが、日本語で「モット、モット!」。やはりまわりでも「モット!、モット!」と大合唱。そうそう、これくらいずうずうしくなければ、この世では生きていけないんだよね。今度来るときは、快く国際貢献できる人間になってくるからと密かに誓ったことでした。

化石のおみやげ店(エル・フード)
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