エピローグ
                      アリババ
  古都マラケシュからモロッコの背骨にあたるアトラス山脈をこえると、ワルザザードという街へと入ります。その近郊にあるのが世界遺産ーアイト・ベン・ハッドゥ。泥(日干し煉瓦)を固めてつくられた城のような集落が小高い山へと連なっています。映画『アラビアのロレンス』の撮影でも使われたとかで、いまでもこの付近は映画撮影のメッカとなっているそうです。(『アラビアのロレンス』の実際の舞台はシナイ半島とかダマスカスのあたりのようですが)


 

アイト・ベン・ハッドゥ
 さて、この集落(今はここに住んでる人はわずか)に行くためには、幅20mばかりの小さな川を渡らなくてはなりません。川には土嚢とおぼしき袋が点々と渡され、飛び飛びではありますが、渡り道となっています。そこに待ち構えているのが小さな子供たち。渡る時に川に落ちないよう、手をとってくれるというのです。ただし、チップが必要です。しばし躊躇しましたが、やはり見てみたい。渡し場へと降りていくと、右の手と左の手それぞれに一人ずつぶらさがってきました。さあ、わたるぞと見ると、なんと二人とも実は川に入って手を引いてくれるのです。浅かったのか・・・という訳ですが、子供たちの貴重な小遣い稼ぎということでした。さて、向こう岸についてから、1ドルを渡そうとすると、「ノーダラー。フィフティ、フィフティ!」と現地通貨で一人ずつにとしっかり主張されました。財布から小銭をさがしていると、今度はあっという間に、他の子供たちも集まってきて、なんと私も私もと手を出されます。二人に何とか同額を渡し、隠れるように脱出。にわか人気者でした。
  これはその翌日のことですが、エルフードへ続く道の途中に、トドラ渓谷という、両側が川を挟んで切り立った見事な景観の谷に行き、そこで昼食となりました。

トドラ渓谷
 レストランに入り、なかなか陽気なウェイターさんたちが料理を運んでくれました。われわれがビールを飲み始めると、「自分たちはアルコールは飲まない。クレージーになってしまうから」などと言いながら話しかけてきます。周りの従業員たちはみんな兄弟だとか。「ところで、ジャパニーズ・キャンディーはないだろうか?」そこで、携帯していた「龍角散のど飴」を渡すと、口に含んで、神妙な顔。そして、急に咳きこみだしてしまいました。これにはみんなびっくり、笑いのウズに。咳・声・ノドに効果があるのは、日本国内だけなのかもしれません。それでも、ママに記念にあげたいからというので、余分にいくつか渡しましたが、きっとママもむせたのではないでしょうか。
 そのテーブルを囲んでいたわれわれと陽気なボーイさんたちとで記念撮影。今頃は、また別な飴をなめてるかな。

 さて、猫好きなみなさん。モロッコにも猫などおるのかい?とのもっともな疑問を抱いているかと思いますが、ご覧の通り、宮殿の中で観光客に混じって、なかなか幸せそうな表情でした。別なレストランでも、ふと外の芝生をみると、日陰に長々と身をのばし昼寝していました。余生をモロッコで猫といっしょに悠々自適、それもいいかもしれませんよ。
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