音楽散歩   間奏曲                              2011年12月号
            バッハ 作曲 バイオリンのためのソナタとパルティータ
H.I
 

 レコード店で流れてたCDに惹かれて、ルドルフ・ゲーラーと言う人の演奏したものを手に入れたのがずいぶん前となる。湾曲弓という古楽器風の弓で弾いた端正な演奏。ソナタ第1番(BWV1001)の2、フーガ、というのが思い出の曲なのである。これも今は昔、初めて手に入れたパソコン、当時のNEC98シリーズのMS-DOS版PCに、電子音源機能が付いていて、フリーの電子音楽ソフトの一曲にこの曲があったのだ。電子音がかなでるフーガを聴き、テトリスなどにはまっていたものだ。
 さて、時が流れ、ゲーラーのCDは今、アイ・チューンズ管理下のPCに取り込まれ、さらに2人の演奏家版が加わった。カナダ出身の女性ララ・セント・ジョンと長年リヒテルとコンビを組んでいたオレグ・カガン。ララ・セント・ジョンは、若々しく斬新でダイナミック。一方のカガンのは、アムステルダムでのライブ版。観客のセキの音や、ざわめきも聞こえる中での、かすれるような、ささやくような演奏。この後まもなく、40代の若さでカガンは亡くなる。「いいバイオリンを手に入れたと思ったら、カガンは死んでしまった」リヒテルがそんなことを書いていた。
 たぶん、他の人による名演もたくさんあるだろう。バイオリンだけの無伴奏曲。古びたアップル製の小さなスピーカーから、バイオリンの音が流れる。そういえば、ステーブ・ジョブズもシンプルさを好んだ。スピーカーが付属していたアップルのLC2というPCもとうの昔に手元を離れたが、スピーカーのほうは今も現役で、きれいな音色で、新しい演奏者を待っている。


 聖橋(御茶ノ水)


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