金払って寄席に行っても、思わず居眠りしたりする。噺が子守唄に聞こえ、いい心持になっていると、拍手で正気に返って、聞いてたフリして手をたたく。噺家の中には、わざと大声を出して、
「あッ、起こしちゃいました?」などもある。
見てないようで、高座からは一人一人が良く見えるようである。時々、こうして「いじられる」。そこはつわもの客もいて、おおいびきが聞こえたりもする。途中で立ち上がり帰る客、トイレからもどる客、携帯を鳴らしてしまう客、弁当を食べてる客。ある意味、寄席の客は勝手で自由である。このどうしようもない連中をひとつにし、噺の世界に引き込むのが、演者の腕のみせどころ。客席との駆け引き、ドラマなのである(ようだ)。
3月上席。夜の部トップは、笑福亭里光。大抵は、ここで出てくるのは二つ目で、あまり期待はできない・・・はずであったが、いやいや聞き惚れてしまった。笑福亭鶴光の弟子と自己紹介。上方らしい地のユーモア。本日は、動物園でトラが死んだので、その皮をかぶって本物代わりを勤めることになるが、隣のライオンが入ってきてサア大変。後で知ったが、今春、真打ちに昇進するそうである。好調なのだ。楽しみだ。
さて、これまたいい噺だったのが、金遊師匠の『子ほめ』。世辞のひとつも言えるようにならなくては、とご隠居が八五郎に人のほめ方を教えるが、出会った番頭さんに、お若くみえます、どうみても厄(42歳)そこそこと言ったら、40になったばかりだと怒られて、次に知り合いの竹に、赤ん坊が産まれたことを思い出し、子どもをほめて酒食にありつこうとするのだが・・・。簡潔にまとめながらも、絶妙な間で笑わせる。
心も晴れる値千金の一日だった。
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笑福亭里光(りこう)
(music Teito 西新宿店HP)

三遊亭金遊(きんゆう)
(墨東キネマ HP)
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