スリランカ紀行-A    ライオン岩と美女の絵−シーギリヤ            2012年5月号
H.T
 豊かではない国だが、教育は無料、医療費も無料、家のない人には国が建てるそうだ。学校は小中高の6・5・2制。
 米は二毛作。農家では多少高くても、自家用の米を自分でつくる。そのほうがうまいから、と言う。また、ヤシの木が一番大事にされ、繊維や葉、実とあらゆるところが利用されている。実のココナッツはすりつぶしてカレーにしたり、アラックという蒸留酒に化けたりする。そういえば、バスからみえる農村風景には、ヤシの木がいたるところに目につく。
 特産品としては、やはりお茶。セイロン・ティーとして世界中に輸出されている。そして、宝石、ゴムと続く。

 さて、2日目夜、島の中央やや北に位置しているシーギリアのコテージ風のホテルに着く。シーギリアとは、『ライオン岩』の意味。平原の森の中に突如として現れる大岩山の名である。高さ200mの大きな四角い岩の頂上に、紀元5世紀に宮殿が築かれたという。時の王の名はカーシャパ。父王を殺し王位に着いたが、インドに逃れていた弟の軍に敗れ、十数年の短い統治は終わる。その後、19世紀に再発見されるまで、この岩の宮殿は忘れ去られていた。
 大岩へと続く道の両側は、広大な庭園と池が広がっている。岩山は朝もやの中でその偉容を誇っている。赤茶けた層が横に走った灰色と黒の岩壁が見える。岩山のふもとに着く。レンガの、あるいは岩の急な階段を登って行く。道はほとんど垂直の岩壁の中に、半ばくりぬかれ、また、手すり付きの歩道橋として設置されている。かなり高度を稼ぎ、螺旋階段を抜けた先に奥行き4・5mのくぼんだ空間があった。鮮やかな色の半裸身の美女たちの描かれた壁が見えた。等身大の10数体ほどが、十数世紀を経て残っている。かつては数百体の美女が、岩山の西壁上部全幅に塗られた漆喰に描かれていたともいう。天女だろうか。「彼女たちが何者なのか、なぜこんなに近づきがたい場所に苦労して描きだされたのかは、誰にもわかりません」(『楽園の泉』アーサー・C・クラーク)。



 岩山の絶壁の壁画(ほぼ等身大)


 岩山を上る


 平原にそびえ立つ200mの岩山
(シギリヤ・ロック)
5世紀後半、カーシャパ王が、絶壁に階段を刻ませ、頂上に王宮を建てたという。ふもとには水をたたえた広大な庭園跡が。
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