群馬県と新潟県の間にまたがる大水上山は一般登山者向けの登山道もない険しい山ですが、分水嶺になっていて、この山の南面に降った雨は、利根川の水源となって関東平野をうるおし、太平洋へと流れ着きます。
川の流れは人生のようでもあり、地球という1つの生き物を循環する血液のようでもあり、山河に根ざした街の風景は心を和ませてくれます。
クラシック音楽には川を題材にした多くの名曲がありますが、スメタナの『モルダウ』はその中でも特に有名ですね。
この曲の冒頭、光を反射しながら流れる水滴のように、弦のピッチカートとハープが音の断片をちりばめる中、2本のフルートが心地よい旋律を奏ではじめます。水源から水滴が次々に生まれ、集まっては離れ、やがて大河へと成長していく様を描いています。
そのあと弦楽器が主題を歌いながら、川の流れに沿ってさまざまな神話や農民の生活や祭りを描いていきます。
この曲は、6曲からなる交響詩『わが祖国』の第2曲で、『わが祖国』はチェコで毎年開催されるプラハの春音楽祭のオープニング曲として演奏されています。チェコの人々にとっては祖国の自然と文化への誇りと愛着の源になっているようです。
利根川(群馬県邑楽郡千代田町赤岩) |