カスピ海と黒海の間を東西に連なるコーカサス山脈の東端にあるアゼルバイジャン共和国の首都バクーには、シルクロードを往来するキャラバンが必ず通るという石造りのシェマハ門がある。壁には旅の安全を祈る言葉が刻まれているという。そこからコーカサス山脈を超えるとロシアの地となる。今も昔も多くの民族と宗教が入り組むこの地では、異国への憧憬が多くの少年をキャラバンの旅へといざなったに違いない。
ヨーロッパとアジアが出会うこの地をテーマにした曲に、ボロディンの「中央アジアの草原にて」という交響詩がある。
クラリネットとホルンがロシアの主題を歌い、馬やラクダの蹄の音を表す旅の主題に乗ってイングリッシュホルンが奏する東洋の主題が続き、最後にフルートがロシアの主題を静かに締めくくる。満天の星空の下、異国を夢見る少年が旅の疲れから眠りにつくかのようである。
中学の音楽の時間に初めて聴いたときは退屈な曲だと感じたが、キャラバンの少年になったつもりで聴いてみるとなかなか楽しいものである。
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