スリランカ紀行-D    岩に彫られた仏像−ポロンナルワ           2012年8月号
H.T
  ガイドブックによれば、中北部やや東にあるポロンナルワは11世紀頃の王都という。広大な公園に遺跡が点在するが、その中のひとつ、岩に彫りこまれた3体の仏像を見る。坐像、立像、横たわった涅槃像。自然の岩の模様が像に浮かび見事だ。腕を組み、思案に暮れているかのような面立ちは、様式化された仏像とは違った人間味が感じられる。
 スリランカ仏教は上座部。個人の修行・悟りを重視している。酒も本来は禁止である。寺院の中だけでなく、鳥、猿、犬や牛が人間とともに集っているのを見ると、この地では仏教の教えの原点が今も人々の生活を律しているのだと感じる。漁業の西海岸にキリスト教徒が多いのは、仏教徒は魚を獲ってはいけないからだそうだ(殺生を禁じている)。そういえば、肉料理・魚料理はあまりなかった。
 とは言え、平民たちには建前と本音がある。酒はやはり必需品。ビールは「LION」という由緒ある銘柄がある。また、ヤシの実を原料としたのが何種類もあるという。「ラー」というのは、できたてのほとんどジュースのようなもの。どぶろくのように、自分の家でこっそり作っている酒も多いとか。鉄条網入りの「カトゥカンビ」などというアングラ酒もあるそうだ。
 さて、シーギリアではコテージ風の宿で連泊。夕食は風通しのいいホテルのレストランで、バイキングを食しながら、ライオンビールで喉をうるおす。と、添乗員さんに、ガイドさんがおいしそうな酒を飲んでいると耳打ちされる。「スリランカ・スペシャル」なる蒸留酒「アラック」。どれどれとオーダーする。ココナッツ製でほんのりと甘い香り。明日は荷物出しもなくゆっくりできる。師匠と二人で腰を落ち着ける。ついには離れたテーブルの、ガイドさんと添乗員さんの席へと移って、アラックをすすりながらクダを巻く。漆黒のスリランカの夜である。






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