「末廣亭日記」拾弐(十二)  余一会                  2012年9月号
H・I
 

  常設寄席は月を10日ずつに分けて、落語協会と落語芸術協会が交代で受け持ちます。それぞれに所属の芸人が高座にあがる訳です。落語家だけでなく、漫才・奇術その他の色物と言われている芸人もどちらかの協会に所属しております(東京では)。ただし、落語協会(約300名)は芸術協会の倍ほどの人数のため、上野鈴本演芸場だけは、落語協会のみの公演としてバランスをとっています。(他の池袋と浅草、新宿末廣亭は交代制)
 さてでは、31日ある月はどうするか。末廣亭では、最後の余った一日を「余一会」と称して特別公演にあてます。そういう訳で、まだまだ暑い8月31日の余一会を覗いてみました。昼の部の「個性派六人衆の会」はパスし、夜の部「志ん弥・正雀二人会」です。まずは、先月号の手ぬぐいで紹介した林家彦丸(正雀師匠の弟子)登場。昔、水沸かしに矢が当たってカーンとなって「ヤカン」と言われるようになった、と先生が愚者に教えたという噺。
 続いて三味線と着物姿の柳家紫文(しもん)。「アツイアツイと言ってはいても三月もすればアキが来る」と都々逸(わかるかな〜?)。「今年は来ないんじゃないでしょうか」
 志ん弥師匠。質屋の庫に夜になると何やら怪しい灯が現れる、と近所で噂になり、番頭と威勢のいい男が様子を見に行くと(「質屋庫」)。中入り後は、禁酒を約束した酔っ払いの親子が数日後には・・・の「親子酒」。うまいですね。
 前半で「毛氈芝居」を演じた正雀師匠が本日のトリ。故彦六師匠の最後の弟子ということで、芝居噺も受け継いでおりますが、今日は3代目正蔵が修行のため今の群馬のあたりを行くと、旅芸人夫婦と出会って、その赤ん坊の世話をすることになる「旅の里扶持」。
 正雀師匠、8代目正蔵(彦六)の思い出を綴った『彦六覚え帖』という本を最近出しております。サイン入りを売店で購入。
 一階席は桟敷も含めてほぼ一杯の入り。最後は、志ん弥・正雀・彦丸の3人が高座にあがり、かっぽれを踊って賑やかに幕。

  
 林家正雀
 (JIKE STUDIO HP)


 古今亭志ん弥
 (古今亭志ん弥HP)
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