館林サイクリングロード  其の三
竹太郎

 鶴生田川沿いに自転車を走らせて約30分。川が途絶え、
道に迷ってしまう。松林が遠方に見えたのでそれを目指して
なんとか多々良沼に行き着くことができた。

 周囲7キロ。冬季には白鳥が来ることで有名。わたしは、
『たたら』という名称が気になりあとで調べてみると、
11世紀に宝日向という一族がこの地でタタラ(フイゴ)を
使って鉄を精錬していたことに由来することがわかった。
町名の「日向」(ひなた)もそこから来たのだ、ガッテン。

 11世紀といえば、父の赴任に伴い都から東下りしてきた
少女が、『更級日記』で葦荻に被われた武蔵野の野の寂しさ
を描いた頃。宝日向一族などの入植者たちがこの地でのちの
鎌倉時代の武家社会出現の基礎固めをしていたことになる。

 多々良沼公園に入ると、藤棚が続き、憩いの場としてよく
整備されていることに驚かされる。お年寄りがゲートボールを
したり、ベンチでのんびりおしゃべりをしたりする光景は、
広々とした沼を悠々と飛び交う野鳥の姿とともに、あくせく
生活しているわたしに一服の清涼剤になった。

其の二 其の四
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