館林サイクリングロード  其の五
竹太郎



 多々良沼から北東に流れる多々良川に沿って600メートルほど行くと
広い敷地の中にゆったりと流れるような建物が見えてきた。
群馬県立館林美術館である。
 群馬県は前橋、高崎が中心で、東の端にある館林はどうしても文化的に
遅れを取っている中、この施設は立派過ぎるではないか。
 この日はサイクリングで疲れていて中に入って美術鑑賞という気分には
なれなかったが。

 その後、地元のことを調べていて、1人の館林出身の版画家を知った。
藤牧義夫である。24歳のとき、大作「隅田川絵巻」を描き終えると、
「姉の家に行く」と言い残したまま失踪してしまった。

 1935年。時代は世界恐慌、満州事変と 暗い時代に突き進んでいた。
そんな中、彼を芸術に駆り立てたものは何か?

この美術館にも藤牧の作品が所蔵されている。
芸術家にとって作品を制作している瞬間が永遠の祈りなのだろうか。

『時代に生きよ 時代を超えよ』

藤牧義夫の残した言葉である。
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